出典問わず、教訓めいたことだったり単純に語感が気に入った歌詞だったり、書き留めておきたいと思った言葉を手帳に書き留めているのですが、図書館で借りた小説すばるを開いて私は固まりました。どこを書き留めていいかわかんない。できれば全編。もしくは行間。無理!
…まあ、強いていうなら不可分カノンの冒頭かな。ちなみに手帳には、神メモの彩夏の台詞が書き留めてあります。
いつもの杉井主人公ではありますが、ラノベという枠に入れたものではないのでいつもと違う点もあります。元彼女と、どうしたら自分たちはうまくいったんだろうと飲みながら語り合ったりとか。温度の低い下心もあっさり口にしてみたりとか。タクシー拾ってヒロイン乗せるとか。…うん?でも拾って乗せただけで別に代金支払ったりはしてないか?もっとも彼女はたんまりお金持ってますが。あ、そういえば今回はヒロインの餌付けをしてませんね。
数年前に壁にぶち当たったというか道を見失ったというか、とにかく何をどうしていいかわからなくなった時、そのヒントを求めてたくさんのものに触れようとしました。あまり手を出したことのなかったジャンルの本、映画。結局は単に気を紛らわせたかっただけのような気もしますが、特にこれといったヒントを見付けられないまま、突破口らしきものを得た時に読んだのが神メモでした。
簡単だよ。藤島くんにもできるよ。
怒ったら普通に怒鳴って、嬉しかったら普通に笑って、ほしいものがあったら普通に言えばいいだけだよ。
(神様のメモ帳 1巻)
私は手帳に書き留めたほどだというのに、アニメではさらっと無視されたんですけども。言うべきことは言わなかったという自覚は多分無意識にあったけど、それを簡単だとけろっと言われたことが衝撃でした。
10代後半の主人公と違って、一旦そういう時期を過ぎた余裕や諦めみたいなものが蒔田シュンにはあるような気がします。
迷ったとき、道を見失ったとき、日が暮れてきて燃料が心もとないとき、大切なのは戻る勇気を出すことだ。立ちすくんでいてはいけない。そこまで歩いてきた苦労が無駄になってしまうと考えてもいけない(とっくに無駄になっているからだ)。
とにかく踵を返して、見知った景色が現れるまで来た道を戻るのだ。そうして記憶にある分かれ道までやってきたら、ようやく息をついて、自分の目指す場所を再確認して、空っぽの胃袋にサンドウィッチをコーラで流し込んで、また歩き出せばいい。
(不可分カノン)
ARIA3巻でアリシアさんが「絶対に道を見失ってはならない」という旅人の話をしていて、これは私の中ではARIAを象徴するエピソードと言ってもいいくらいのものです。ただし天野作品全体に言えることですが、その前向きさを白々しく思う部分が実はかなり大きい。そしてだからこその魅力でもある。
迷い、道を見失った時、再び顔を上げて、かつて求めた以上の素晴らしい世界があると信じられるほどの勇気があるなら、私はそもそも迷いすらしなかったでしょう。ためらったがために迷い、立ちすくむことを選んだ。再び歩き出そうとするなら、それは間違いなく前へ向かってではなく、うしろへ向かってでしかなかったし、実際そうしました。それが絶対的に正しいことだったと今信じているし、最期の瞬間まで覆らないと信じています。そういう勇気ならあります。
そんななので、不器用なのに変なとこ小器用で、キラキラしながら前を向き続けたりなんてことは絶対にないのが、杉井作品の妙に心地良いところ。あんまり感情移入するような読み方はしないけど、この人のだけは別。おかげで逆に読みにくいこともあるけどね。
しかし何が残念って、音楽ネタが本領発揮なのに、それのせいでアニメ化のたぐいが無理そうだということです。うーん、楽聖少女ならいけるかなー。
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