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12巻収録56~60話。雑誌掲載時に書いたものです。

56『生き人形』 07年10月号 07/08/31

 ほんわかまったり、事件らしい事件が起こらないARIAにおいて、比較的大事件が起こったあとのわりには、至極普通のいつも通りの話で、ちょっと拍子抜け。
 人形と夏、特に真昼の日差しの下は相容れないような、そんな気が一瞬しました。いつまでも変わらない存在と、明るく騒がしく強烈なエネルギーを持っているからこそ、過ぎていくことがほかのどの季節よりも強く感じられる夏。生命の季節と、人の形をしていてもあくまでも命を持たない人形。そのアンバランスさが肝になっているような気もしますが、深読みかな。
 そういえばうちには2体のモンチッチがいて、片方は笑顔、片方は泣き顔でした。でした、っていうか、今もまだありますけど。小さい頃、片方のモンチッチが何故泣き顔なのかが疑問だったけど、笑顔を疑問に思ったことはなかったなぁ。彼らの表情は、当然今も昔も変わらないけれど、時間の経過によって劣化して決して再生しないという点では、人間とは違うかたちで流れる時間の中に確実に身を置いているわけで。むしろだからこそ、そこに人格を見てしまうと、変わらない思いをずっと持ち続けているように見えるのかも、って、だんだん自分で何言ってるんだかわからなくなってまいりましたよ。
 で、結局おじいさんが何者なのかは明かされないままですか。謎多く見えて実はただの街の人形屋のオヤジなんだけど、看板代わりにこうやって持ち歩いてるとか!…などと、夢のないことを言いたくなってみたり。ついでにサブタイトル、あまり『生き』に意味はないような。単純に『人形』とか『お人形』あたりでもいいような気がします。
 

57『薔薇の名前』 07年11月号 07/09/30

 えーと、何だ、つまりプリマ昇格は抜き打ちテストじゃないのかよ。トラゲットの時の話からすると、志願制のようにも取れるんですが、やっぱり初回は指導者なり経営者なりのゴーサインがあって実施、落ちたら再試験は志願制というか、「もう一度やらせてください!」みたいな感じかな。ところで、「私のオフがその日しかない」ということは、試験官は休日返上でやるんですね…。有休与えてよ、会社。というか、試験官はもっと上のお偉いさんがするので、別に晃さんが同行する必要はないんだけど、そばで見ていたいから私の休日に試験を受けろという…、わけではないな。
 通り名もやっぱり謎です。灯里と藍華はさんざん自分で考えてたけど、まあ、「こんなのがいいな」という希望の話で、別に「よし、これに決めた!」っていう決定をする話ではなかったということで。このへんに関しては勝手に決められてたり、自分で決めたり選んだり、人それぞれ(会社それぞれ?)ってことかしら。『誰が言い出したのかわからないけど、いつの間にか付いている名前』というのが一番ふさわしい気がしますが、昇格時に協会に出す書類か何かがきっとあるでしょうから、そこに通り名を書き込む欄すらありそうです。
 で、相変わらず藍華が可愛くて仕方ない様子の晃さんが、何かいいなぁ、と。後輩の落ち込みようを想像して青ざめちゃってますよ、この人。
 サブタイトルは、元ネタ有り?偶然?内容的な関連はまったくなさそうですが、同名の小説があって、数ヶ月前にたまたま映画を観たところ。原作も読んでみたいと思いつつ、何だか自分には手に負えなさそうなにおいが。
 

番外編『3人娘』 07年12月号 07/10/31

 アリスの髪にヘアゴムがっ!?(天野絵には、飾りが何もない『ただのヘアゴム』というものが珍しい。変なところに反応してしまった…)
 普段から会社の人(多分)にまで通り名で呼ばれちゃうんですね。…恥ずかしいなぁ(笑)。
 アリスといえば、ダメなとこが私と似てるヒト。藍華も大概ですが、アリスの方が、もうね、たまにお前は私かというくらいダメなとこが似ていることがありまして。この話もそうだなぁ。小学生の頃、自分はただ黙って教室にいるだけで、相手から寄ってきて何となく友達はできるんだけど、そういう相手とは、学年が変わってクラスが離れるとそれきりなんですよ。クラスが変わっても前みたいに接してくれるかどうかが不安で、基本的には相手を避けようとするし、実際に知らんぷりされたりする。そんなわけで、その頃からの友達で、尚且つ今現在も仲がいい友達というのは、クラスが一緒になったことがきっかけじゃない友達なんですよね。それでも別に頻繁に会ったり連絡するわけじゃなくて、たまにばったり出会ったりすると必ず声はかけるし相手もかけてくれるんだけど、時々ふと、特別理由もなく『会いたいなぁ』なんて思っても、『けど別に用事があるわけでもないしなぁ』が、必ずあとに付くんです。自分から何かに誘うのも苦手だし、こっちからメール出すくらいで、いちいち卒倒しそうなくらいに緊張する。そんな時にたまたまいいタイミングで『メアド変えたよー』なんて向こうからメールが来たりなんかして、よっしゃあ!(嬉)とか思うわけですよ。……えーと、コレ、先週の話。
 最初は(自分含め)バカだなぁ、と思いつつ読んでたけど、今コレ書くために2、3度読み返してたら、何か泣けてきたじゃないかくそぅ。
 で、何だかんだ言いつつ、つまり灯里と藍華はアテナさんに頼まれてやって来た、って解釈でおっけ?
 

58『遙かなる蒼』 08年02月号 07/12/29

 10代の小娘を支店長兼務にしちゃうんですか。何つーか、ダイナミックですね。今更ですが、ARIAカンパニーの唯一のプリマと実質的経営者が同じ1人というのも、かなりの無理がありますよね。灯里が来るまでのあいだに、期間はともかく絶対にアリシアさんひとりきりの時期はあったと思うんですが、灯里が事務を手伝ってやっと切り盛りしてそうな感じなのに、一体アリシアさんはどんな仕事のこなし方を?どんなできた人間でも、さすがに観光案内中に社屋に残って店番は絶対にできませんし。っていうか、今までもずっと、灯里が練習中だと会社は無人か…?電話番くらい欲しい。営業中のプリマはまずいけど、練習中の半人前だったら携帯電話に転送してもアリか。
 姫屋からサンタ・ルチア駅の距離もネオ・ヴェネツィアの自体広さもわからないのでアレですが、そんなに離れてはいないと思うので、支店を出す意義に疑問を感じたりなんかは…、するだけ野暮ですか。支店長は別に猫じゃなくてもいいのか。猫といえば、この話の空気をぶちこわすアリア社長のあのアタマは一体。
 今までさんざん引っ張ってきた昇格試験はというと、実態が普通過ぎるから正体が謎だったのでしょうか。抜き打ちでもありませんし。希望の丘との差は、水路のみに関しては更に細く入り組んでいること。自動車教習所で「時間が余ったから」とさせられたS字を思い出しました。結構必死でどうにか通ったのですが、最後に教官が「コレ、大型車用な。次回はあっち」と更に小さいS字を笑顔で指した時は、あまり表面に出して動じない私が、思わず「え」って言っちゃいましたよ。まあ、最終的にはS字もクランクも、一度も乗り上げも接触もしてませんが。
 ……えーと、そうだ、あれ?筆記試験は?勉強会なんてしてるから、てっきりあるものだとばかり!
 ところで、昇格年齢についてはどうなってるんだろう。アリスが学校を卒業しちゃったあたりで、カウントが更によくわからなくなってますが。何にせよ、15歳というアリシアさんの記録が抜かれることはないと思われていたことからして、3人娘全員がかなり早い昇格なんじゃないでしょうか。
 

59『未来』 08年03月号 08/01/31

 何つーか、再びダイナミックですね。十代半ばの小娘にひとつの店をまるまる任せちゃう藍華の親やアリシアさんよりも、アリシアさんを水先案内人の職から離れさせる協会が。舟を漕いでいるからこそアリシアさんは頂点に立つ人なのであって、そこから離れれば普通の人じゃないですか。完璧超人ではありますが、その正体は『普通の女の子』じゃないですか。まだ19歳、まだプリマ4年目、体力的に不足があるわけでもなく、わざわざトッププリマを舟から下ろしてまですることではないような気がします。アリシアさんの無駄遣い。どう考えたってもったいないと思うんだけどなぁ。
 そういえば、晃さんはスノーホワイトの名を受け継ぎたいという藍華に「気の長い奴だ」と言ってたけど、つまり晃さんもこのへんの話は全然知らなかったのでしょうか。自分の真似っこで水先案内人になり、先に昇格してしまい、こんな理由で引退する幼なじみ。わお、かなり嫌な友人ですね…。
 今までずっとアリシアさんは灯里から一歩引いていたような気がしますが、もし協会の誘いが灯里がやって来る前からあったとしたら、そう思って読み返すと何かすごくいいですよね。ここで寂しい顔をさせるために、今までずっとほぼ一貫して笑顔で動じないおねえさんだったと思うと、壮大な伏線とも言えるでしょう。まあ、もともとは短期連載の予定だったみたいなんで、それはないでしょうけど(笑)。
 ……と、ここまで書いててすっかり忘れてしまったんですが、そのくらい結婚の影が薄いです。私の中ではわりとどうでもいい位置に追いやられてしまったようです。ストーリー上もあまり意義がないような…。まあ、灯里と離れるのが嫌で昇格させるのを踏みとどまっていたということは、結婚を機に引退という前に、灯里の昇格を機に結婚するとも言い換えられるわけで。後輩よりも優先順位低いみたいですぜ、旦那。もっとも、灯里のそばにいられるのは、仕事というある意味口実があるからこそですからねぇ。
 うーん、しかしなぁ。何か、みんな生き急いでる気がするんだよなぁ。以前新聞の特集記事で、作品に流れる空気が『優しい終末感』と評されていたけど、久しぶりにそれを感じました。
 

60『水の妖精』 08年04月号 08/03/01

 すっかり忘れてましたけど、そういえば灯里が火星で最初に遭遇した人間は郵便屋さんだったんですよね。ここに来てようやく本編で名前が出てきましたが、何となく事前に知ってしまっていたのが残念なような気もします。私も一緒に「郵便屋さんかよ!」って思いたかったよー。
 灯里が部屋の中に幻を見始めたあたりで、まさかの陰鬱なエンディングが出てくるかと思って、一瞬変な期待をしてしまいました。それはそれで私としてはアリなんですが、まあ、ここはやっぱり普通に明るく終わるところですよね。あと、メールの相手がはっきりと明かされてしまうんじゃないかというドキドキ。私は謎のままにしておくべき派で、且つ相手が『たったひとりの誰か』であって欲しかったクチだったんですが…、でも、大勢の目に触れるけれど、本当はある特定の誰かにだけ向けて書き続けたメッセージという可能性もなきにしもあらずですね。
 さて、問題なのはラストの8ページ。前提としまして、私はいろいろアニメのアイちゃんには納得のいかないものを未だにしつこく抱えているわけです(笑)。まず、わざわざ作った新キャラにしてはあんまり活用していないのではないか、という点。毎話ラストシーンで「はっ!?」とその存在を思い出す影の薄さ。あと、名前。藍華と無駄に近いのが気になって気になって仕方ない。そりゃあ現実には狭い人間関係の中で偶然名前がかぶることくらいありますが、ここは無意味にかぶせるところじゃないだろう。そして最大のポイントは、原作において明かされないメールの相手を明かすことで、火星での生活では『みんなの灯里ちゃん』のような存在に見える灯里が、特定の誰か、それが『誰か』ではなく『この人』と特別親しいようなポイントをはっきりと示されることで、人間関係のバランスが歪むような気がしてならないのです。
 で、そんなこんなでこの終幕ですけども。直前で、メールの相手=アイに関しては否定されていると見ていいと思いますので、アニメのアイとは同一人物なんだろうけれど、ある意味別人であるという見方をしていいのではないかと思います。しかしどこか釈然としない何か。何がどうなろうと、決定的に残る藍華との名前問題。そして灯里の、どう考えても絶対にもみあげにただならぬこだわりがあるに違いない髪型。第一印象は『超(スーパー)もみ子』。ああ、別に不満とかそういうわけではないんだけど、変なとこが気になってもやもやする!(笑)
 …あのう。ところでウッディーさん。やっぱりそのうち「新鮮なのだー」とか言って、鶏肉も持ってきたりするんですか?

 読み終わって、『(AQUA)1話で主人公の名前を誤植』という、ある意味AQUA&ARIA史上初にして最大の事件を思い出していて、ふと何か引っ掛かるものを感じました。何だろうと思ったら、私がそれを読んだのは、ちょうど6年前の同じ時期だったんですね。Stencilを買うか単行本化を待つかをだいぶ悩んで、買うと決めたのはAQUA1話掲載号の発売から約1ヶ月後の2月末。つまりは次の号が発売される直前、たしか前日でした。あの頃はよく1人で京都駅の周辺をうろついていて、そのStencilを買ったのも京都タワービルの本屋で、もちろん最後の1冊。よく残っていたものです。
 灯里にとってARIAカンパニーの空気がそうであるように、私にとってはAQUA・ARIAが、『あの頃の思い出』の入れ物のようなもの。この作品に導かれて出会った人がいます。ページを開ければ、灯里たちと一緒にその人がいるような気がするけれど、ページを閉じれば、やっぱり夢は醒めてしまいます。もちろん、この先いつでもページを開くことはできるけれど、作品が完結したことで、めくることのできるページの終わりはすでに示されました。それと同時に、その人と共有していた時間が決定的に止まったような、そんな気がします。
 流れの中にいる時はさほど長いとは思わなかったけど、止まってから改めて思い返すと、やたら長い時間だった気もしてきます。いや、気がするんじゃなくて、実際長かったんですけど。連載開始当初は灯里と同い年だったもんなぁ…。てっきり6巻くらいで完結すると思ってたのに、その倍も続いてたんですね。
 とりあえず今は、夢から醒めたような気分。ARIAそのものと、それに付随するいろいろをぼんやりと思い返しながら、夢と現実のあいだでまどろんでいるような、そんな気分です。


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